加熱式タバコ(電子タバコ)の呼出煙と受動喫煙防止条例について
加熱式タバコは副流煙が出ないから受動喫煙の心配がなく無害安全!と宣伝されていますが、あんな臭いもんが安全なわけないだろと思っていました。
また、受動喫煙防止条例では加熱式タバコについて緩和されているとは聞いていましたが、どこまで緩和されているのかについてよくわかっていませんでした。
そこで、今回加熱式タバコの吐く煙と受動喫煙防止条例における加熱式タバコの許可エリアとの2つについて調べてみました。
受動喫煙における受ける煙とは
受動喫煙で受ける煙は、大きく分けると燃焼中の煙草から発生する煙と、煙草を吸っている人が吐き出した煙と、の2つです。
この2つを合わせて副流煙だと思っていたのですが、どうやら定義上は異なるようです。
副流煙は燃焼中の煙草から発生する煙のこと
燃焼中の煙草の先っぽから立ち上るあのだけ煙が副流煙なんだそうです。
あの煙はフィルターや吸う人の肺で濾過されずにダイレクトに空気中に放出されているのでとても有害。
加熱式タバコはあれが、燃焼が行われず副流煙が発生していないから受動喫煙における有害度低減というのはまぁ筋が通っていると思います。
低減であるならば。
吸っている人が吐いた煙は呼出煙
受動喫煙で非喫煙者が暴露する煙は副流煙に加えて吸っている人が吐いた煙もありますが、こちらは呼出煙(こしゅつえん)というようです。
加熱式タバコだって呼出煙はあるはず。
加熱式タバコにおける呼出煙の有害性
以下、日本呼吸器学会の見解を引用させていただきます。
新型タバコは周囲の人々への受動喫煙の危険が指摘されています。「煙が出ない、あるいは煙が見えにくい」とされていますが、特殊なレーザー光を非燃焼・加熱式タバコ使用者の呼気に照射すると、大量のエアロゾルを呼出していることが明白になります。燃焼式タバコ使用者の呼出煙(“見える煙”)と同様に、大量の“見えにくいエアロゾル”を呼出しています。世界保健機構では、「電子タバコのエアロゾルにさらされると、健康に悪影響がもたらされる可能性がある」と指摘しています 。世界保健機構がレビューした複数の研究では、1)電子タバコ使用者の呼出煙中のニッケルやクロムなどの重金属濃度は、燃焼式タバコの呼出煙よりも高い、2)PM2.5、ニコチン、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒドなどの濃度は燃焼式タバコの呼出煙中より低いが、通常の大気中濃度の 14 - 40 倍(PM2.5)、10 - 115 倍(ニコチン)、2 - 8 倍(アセトアルデヒド)、20%高い(フォルムアルデヒド)、とされています。燃焼式タバコの受動喫煙による健康リスクに対しては明確な科学的根拠がありますが、新型タバコの受動喫煙による健康リスクについて科学的証拠を得るにはかなりの時間を要します。有意な健康リスクではないとの主張もありますが、根拠はありません。しかし、“見えにくいエアロゾル”中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」、と世界保健機構は述べています。
(引用元:非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解)
要約すると、加熱式タバコの呼出煙は、重金属濃度が燃焼式タバコよりも高く、ニコチン、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒドの有名な有害物質については燃焼式タバコよりも低いけど大気中の濃度よりは遥かに高い。
ただ、高いとはいえこれが健康被害確実かどうかは今後データを取っていかないとわからないけど、基本健康被害が出る前提でいいんじゃないか、とのこと。
あんだけ臭いんだからそりゃ無毒ってわけがないでしょうよ。
なお、厚生労働省の資料には、ニコチンに限った記載があり、ニコチンはやはり少ないとのこと。
少ないと言っても非喫煙中の空気中に比べれば段違いにあるのは明確です。
また、資料の冒頭に現時点では測定できない化学物質もあると記載されています。
加熱式タバコを吸っている人がいると異様に臭くなることがあるのはこういった化学物質が関係しているのでしょうか。
こういった事情を踏まえると加熱式タバコは絶対安全とはとても言えず、多分ダメと考えるのが妥当だと思われます。
受動喫煙防止条例における加熱式タバコの許可範囲
国が現在まとめている受動喫煙防止に係る法令よりも厳しいと言われている都の受動喫煙防止条例。
後日ちゃんとまとめようと思っていますが、今回は加熱式タバコの許可範囲についてです。
喫煙専用席においてのみ許され基本的に屋内はNG
病院、児童福祉施設、行政機関、幼稚園、保育所、小中高校については、敷地内完全禁煙です。
加熱式タバコが許可されるのは、病院、児童福祉施設、行政機関、幼稚園、保育園、学校を除く多数の人が出入りする施設において設けられた喫煙専用室のみです。
施設内のどのエリアでも吸えるわけではなく、あくまで限られた一部においてのみだと考えられます。
なお、喫煙専用室の基準等については、本日成立した国の健康増進法改正案において規定された内容に準じます。
そして、その健康増進法改正案においてもまだ喫煙専用室の基準等が空気が喫煙専用室に向かって流れるとしか定義されておらず、今後有識者の意見を伺って決めていくそうです。
資料に添付されているイメージ図は大型ショッピングモールでよく見るタイプのものでした。
(画像引用元:健康増進法の一部を改正する法律案参考資料における14ページ目)
しかし、基準の範囲内であれば常識外の構造でもセーフとなるものなので、敷地面積や当該空間内における什器等についてどうなるか、もうしばらく見ていきます。
指定タバコ専用室であれば喫煙しながらの飲食可
ここで言う指定タバコというのは
たばこのうち当該たばこから発生した煙が他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでないたばことして知事が指定するもの
(引用元:東京都受動喫煙防止条例よくあるお問合せ(その他))
とのことで、加熱式タバコはこれに含まれるようです。
なので、分煙の形式にして加熱式タバコの専用室を設ければ該専用室内で飲食可能となるようです。
いずれにしても一部の例外を除き加熱式タバコが施設内の全エリアで許可されるといったことではありません。
なお、一部の例外とは、シガーバーやタバコ屋等のタバコを主目的にする施設です。
加熱式タバコも無害ではないし許可される範囲は狭い
以上のことから加熱式タバコは副流煙がないから受動喫煙の心配なしというのは誇大表現だとわかります。
また、加熱式タバコは都の受動喫煙防止条例でも許可される範囲が広いといっても、指定タバコ専用喫煙室に限られることや、指定たばこ専用喫煙室についても喫煙専用室と同様に20歳未満の立ち入りが禁止されるといった制限があります。
事業者や団体組織も、こういった事情を踏まえて良識ある判断をしてくれることを切に願います。