効果が出る原理を知りたくてinfinityBalanceの公開特許公報を読んでみた
ビリヤードやダーツをやっていると最近ちらほら目にする機会が増えてきたアイテムとして、infinityBalance(インフィニティバランス)というものがあります。
シリコン製のリストバンドで、アマチュアプレイヤーだけでなくプロプレイヤーで着用している方もしばしばいらっしゃります。
このアイテム、ホームページを見ても効果の根拠があまりに謎だったのですが、パッケージに特許出願中と書いてありました。
公開されたら読んで何が効果をもたらしているのか知りたい、と思っていたのですが、2016年5月12日に公開されていたとのことで、早速読んでみました。
- infinityBalance(インフィニティバランス)とは
- infinityBalanceの特許を何故読めるのか
- 特開2016-73628号公報を読んでみた
- 異物混入しているのにシリコン成型できる技術力
- 特開2016-73628号について思うこと
infinityBalance(インフィニティバランス)とは
infinityBalance(インフィニティバランス)とは、世界のある特定の場所でのみ採取できる自然界に存在する貴重な天然の資源を粒子化し、その粒子に弊社が開発した独自の特殊加工を施すことによって、よりバランスパワーを高め、無限大のバランスパワーを持つパワー微粒子を作り出す事に成功しました。
この粒子を「パワー粒子パウダー」と名付け、そのパワー粒子パウダーをブレスレットやカードの樹脂に練り込み、成形加工して完成した製品がinfinityBalanceです。
世界のある特定の場所でのみ採取できる自然界に存在する貴重な天然の資源であるパワー粒子パウダーが何なのかわからなすぎて凄い。
とにかく、粒子が体に作用してバランスパワーが高まることで、精度を競うビリヤードやダーツで圧倒的なパフォーマンス上昇が見込めるというわけですね。
infinityBalanceの特許を何故読めるのか
特許というものは、出願すれば遅くとも約1年半後に公開される仕組みです。
これは、新しい技術を公開した人に対して、その代償として一定の期間、一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与すること、第三者に対しては、この公開された発明を利用する機会を与えるものである、という特許法第1条の趣旨と、公開について定めた条文(特許法第64条等)によるものです。
なので、工場のノウハウだと特許で保護するよりもそもそも隠し通すことで独占、保護するといった手法がよく取られます。
infinityBalanceの特許は2015年9月30日に出願されていたので、2016年5月12日に公開されていたわけです。
別に特別な事務手続きをして読んだわけではなく、J-PlatPatというサイトにいってちょっと調べれば公開されている特許公報は自由に読めます。
J-PlatPatで検索して見つけた次第です。
特開2016-73628号公報を読んでみた
と、いうわけで、infinityBalanceの公開特許公報こと特開2016-73628号公報を読んでみました。
興味がある方は上記したJ-PlatPatのページ内特許・実用新案番号照会ページより特開2016-73628号を検索し、読んでいただければと思います。
衝撃の請求項1
infinityBalance最大の謎である世界のある特定の場所でのみ採取できる自然界に存在する貴重な天然の資源。
これの正体を知りたいと切に願っていました。
それはさておき、一体どこを権利として押さえに行ってるのかと特許屋の性分で真っ先に読んだ特許請求の範囲のページの請求項1の1行目に記載されていたのは
ヒマラヤ岩塩
の文字。
確かに、世界のある特定の場所(ヒマラヤ)でのみ採取できる自然界に存在する貴重な天然資源(岩塩)なので、貴重かどうかだけが怪しいですがそこを除けば何一つ嘘は言っていませんが、読み始めて5秒で答えを知ることになるとは。
infinityBalanceのメカニズム
明細書中段落[0076]からヒマラヤ岩塩が何故作用するのかについての記載が始まります。
段落[0076]と段落[0077]の記載をまとめると、
- この世における三次元的な存在は何かしらの周波数帯で振動している
- ヒマラヤ岩塩は酸化還元電位が非常に低く干渉力が強い
- ヒマラヤ岩塩の発する周波数帯が神経系を構成する神経細胞や血液、つまり脳に影響を及ぼしバランス感覚を改善
とのことです。
大事なところの説明を2段落にまとめられていて凄い!
あと、脳に影響って怖っ!
異物混入しているのにシリコン成型できる技術力
ヒマラヤ岩塩が入っているのに製品として問題ない美観のシリコン成型物を作れる技術力が凄いなと思います。
あまり樹脂成型についての知識がないのですが、素手で材料を触っただけで異物による穴の発生等が起きうるという話を目にしたので、きれいなシリコンバンドを作れるというのが凄い。
特開2016-73628号について思うこと
一通り読んでみて、infinityBalanceについて学ぶことができたのですが、色々思うところがあります。
工場のノウハウのように秘匿しておくべきだったのでは
せっかくパワー粒子パウダーというイカした名前を付け、世界のある特定の場所でのみ採取できる自然界に存在する貴重な天然資源とその存在にミステリアスな雰囲気をまとわせているのに、出願したことでヒマラヤ岩塩だと完全にばれてしまう結果になっています。
特許出願中という箔付けよりも隠しておいたままにしておいた方がよかったんじゃないかなって思います。
何より、後述しますが特許出願中ってそんなに大したことじゃないですし。
特開2016-73628号はみなし取下された
infinityBalanceの特許出願は、2018年12月4日をもって審査請求されなかったことによりみなし取下されました。
つまり、特許庁による審査が期限内に依頼されなかったので、特許として登録されることも特許にならないと判断されることもなく、特許出願が実質的に取下げされました。
結局のところ、意味が分からない好き勝手書ける実験結果と僕の考えた岩塩パワーを書いたお気持ち文書を世の中に公開しただけで終わってしまいました。
個人的には審査請求してもらって特許庁がどう判断するか見てみたかったので残念です。
特許出願中って凄いことじゃない
これは一般論ですが、世にあふれる特許出願中、特許出願済みという表現は、特許庁に書類を提出したという意味でしかなく、特許として認められ特許登録されているという意味ではありません。
出願の後に審査請求し、審査を受けて、一発登録されたり、何かしらの理由で拒絶されたのを権利範囲を変更したり意見書で腕力を発揮したりする中間応答を経て特許庁を納得させた場合に初めて特許登録されます。
当然、審査の結果拒絶され、補正や意見書の提出をしても認められずに拒絶査定を受ける場合もあります。
審査請求をしたらすぐ審査されるわけではなく、通常はそこから1~2年の期間を経た後に審査結果が通知され、中間応答すればさらに数か月かかります。
特許というのは相当に時間がかかるものですが、それでも特許出願中であるとアピールしている場合には怪しいなと思った方がいいかもしれません。