ビリヤード場と消防法
先日の禁煙の記事にコメントいただいた件で、ビリヤード場と消防法の関係についての質問を受けました。
前回調べた際に、ビリヤード場の開業のために専用の申請等はない、と結論付けていたのですが、それは風営法だけで、言われてみれば建築基準法とか消防法とか、そういった建屋関係の法律に係る申請はありますよね。
私自身は特許屋であって行政書士ではないのでまったくもって門外漢ではありますが、いい機会だったので色々調べてみました。
- 本記事の前提
- 事の発端
- 防火管理者とは
- 事業所に必要な防火管理者とは
- 最低でも乙種防火管理者を置かなければいけない
- 防火管理者になる方法
- 防火管理者を設置しない場合どうなるか
- 防火対象物の申請違いについて
- まとめ
本記事の前提
上述した通り、私は行政法やその他諸々の法律、条令に普段全く縁がない生活をしているので、これから記載する情報について、必ずしも正解ではない可能性があります。
何せ特許屋ですし、知財四法ですら怪しい人間なので、もし間違っている箇所がありましたら適宜コメントいただけると幸いです。
また、以下の記載について、条令が関係するところが多々出てきますが、東京都の条例に基づき記載します。
条文の番号や内容について、各地域ごとに違いがあると思われるので、条例については該当する地域の条例を参照してください。
あと、こういった私見を示すことって素人でもやっていいと考えて記載していますが、もし行政書士や弁護士等の資格持ちでなければ記載NGでしたら、ご連絡いただき次第速やかに本記事を削除いたします。
事の発端
とあるビリヤード場(以下、某店と記載)が、消防署に特定の人間である先生と生徒だけが出入りするビリヤード練習場を開業すると申請したそうです。
その後、某店はビリヤード練習場からビリヤード場に営業方針を変更したのですが、変更後に消防署の方がご来店。
お客としてではなく防火設備等の点検で来たそうで、某店に限らず某店が入居しているビルの各テナントに防火管理者を設置するように、とお達しがあったそうです。
某店はお達し以降も防火管理者についてはお茶を濁しているしビリヤード場として営業しているらしく、某店に通う方としてはオリンピックに向けて消防署が本気を出してきて某店が営業停止になったら困っちゃう。
これってどうなるの?というのがいただいたコメントでした。
防火管理者とは
甲種と乙種の2種と、統括防火管理者、というものの計3種があるようです。
今回関係しそうなのは甲種と乙種の方で、最近の法改正によって義務付けられた統括防火管理者というのはビルオーナーとかが関係するのかな。
甲種と乙種の違いは、甲種、乙種がある他の資格と概ね一緒のようで、甲種にカバーされる一部の業務ができるのが乙種のようです。
事業所に必要な防火管理者とは
事業所の区分ごとに必要となる防火管理者の種別が異なるようです。
より詳しくは、下記リンクを参照していただきたい。
ビリヤード場に関係するところだけ抜粋したいところですが、「防火対象物」なるものが謎です。
防火対象物とは
不特定多数の人に利用される建造物等を指す言葉のようです。
消防法施行令別表第1の記載を見るに、2項ロに「遊技場」と明記されており、これにビリヤード場が含まれるようです。
この、2項ロに該当する建造物は、特定防火対象物に指定されているため、防火対策がそれなりに厳しめです。
一方、冒頭に記載の「ビリヤード練習場」となると、15項のその他事業所等に分類されるらしく、こちらは非特定防火対象物で、防火対策がまだ緩め。
収容人数の算出について
テナントごとではなく、ビル全体の収容人数を計算するようです。
2台しかないお店でも他階に人がいっぱいの場所とかあったりすると人数の要件が満たされてしまうみたい。
この点、ビルが燃えたら出火したテナントだけじゃ済まない可能性が高いことを考えると妥当ですよね。
収容人数について、椅子であったり台であったりと色々計算して算出するらしいのですが、ビリヤード場においてはビリヤード台1台で2人収容と計算されるようです。
椅子の幅とかもちゃんと見るらしく、計算が大変そうです。
ビリヤード場に必要な防火管理者
ビリヤード場が特定防火対象物であることから、ビル全体で30人以上収容できる場合、300m^2以上の床面積なら甲種、300m^2未満なら乙種でもOKとなります。
ビリヤード練習場に必要な防火管理者
ビリヤード練習場が非特定防火対象物であることから、ビル全体で50人以上収容できる場合、500m^2以上の床面積なら甲種、500m^2未満なら乙種でもOKとなります。
こう見ると、この点でもビリヤード場とビリヤード練習場で差がありますね。
最低でも乙種防火管理者を置かなければいけない
某店がビリヤード場、ビリヤード練習場のいずれである場合にも、乙種防火管理者を置かなければいけない、という結論になるようです。
これって、都内のビリヤード場のようなビルの1テナントとして入るような業態だったらほぼ確実だと思うし、ビリヤード場に限らずビルのテナントとして始める個人事業なら絶対に必要になるように思うんですが、不要な場合とかってあるんでしょうか。
防火管理者になる方法
詳細は下記リンクを読んでいただきたいですが、当ブログにも概要を記載します。
乙種の場合は乙種防火管理講習を受講すればOKのようです。
乙種防火管理講習は、1日がかりですが1日で終わる講習で、費用は1500円。
甲種の場合は、防火防災管理新規講習を受講すればOKのようです。
防火防災管理新規講習は2日かかる講習で、費用は5000円。
なお、どちらの講習も最後に試験があり、それに受からないとダメなようです。
どちらの講習もそんなに高くないし、ただ面倒なだけのようですね。
防火管理者を設置しない場合どうなるか
必要なことは確定していますが、消防署に消防点検されないかタレコミ食らわない限り設置していないことがばれない防火管理者。
講習が面倒なので設置しないという選択肢も出てくるんでしょうけど、この場合というか、バレた場合どうなるのか。
火事が発生したことで未設置がばれた場合
まぁ、大変なことになるでしょうね。
これで人身の被害が発生した場合には、防火管理者がいない、つまり防火対策をろくにしていなかったと判断されてオーナーがより強烈に責められること間違いなし。
たった1~2日の講習をサボったばかりに大惨事です。
火事関係なく消防署に未設置がばれた場合
消防法第8条第3項によると、防火対象物に防火管理者がいない場合には、消防庁又は消防署長が居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権限を有する者に対して、防火管理者を定めることを命ずることができるようです。
また、なおも防火管理者を定めない場合には同法第42条第1項より6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となるみたいです。
なので、法律上は営業停止にはなりませんが、お店のオーナーがしょっぴかれる可能性が残ります。
ただ、実務上はこの手の話で罰則適用になるって殆ど聞かない話らしく、規定はあるけどうやむやになるって感じのようです。
防火管理者の設置とリスク管理の問題
結局のところ、防火管理者を設置して諸々のリスクを回避するか、面倒くささを優先させて色々うやむやにしつつ火事にならないことを祈るか、の二択になるようです。
個人的には、ことビリヤード場であるならば、ビリヤードというショットのリスク管理が大事な種目をやっているのにこのリスク管理ができないとか起きうるのかな、と不思議です。
防火対象物の申請違いについて
さて、某店の場合にはこの問題もあるのかもしれません。
消防署がどう判断したか不明なので未だにビリヤード練習場扱い(15項)なのか、それともビリヤード場(2項ロ)になったのかわかりませんし、そもそも最初が虚偽だったのか最初はあってて途中で業態変更になったのかもわかりません。
ただ、虚偽だろうが変更だろうが東京都の条例では一緒でした。
届出は火災予防条例第56条の2に規定されている
当然のことながら、そもそも届出してねっていうのは条文で規定されています。
使用を開始する7日前までに申請しなきゃいけないようです。
変更の場合も、類推解釈すれば変更開始する7日前までになると思われます。
未届出や虚偽申請は10万円以下の罰金
罰則規定も同条例で規定されており、こちらは第67条の2第4項。
この手のって注意されるだけとかが多いイメージでしたが、火事に対して厳しい日本らしくちゃんと罰則規定があるんですね。
ただし、上述の通りこの手のものが実務上罰金になったって聞かないという話を見る限り、注意されてから書類提出でセーフになるような気がします。
注意されてから作る書類って正式な書類よりも面倒なイメージですが。
まとめ
ビルテナントって大体は防火管理者が必要なんだということや、申請の仕方によって防火対策費用や工数を削減することができなくもないという法律の抜け穴みたいなことを知ることができてなかなか有意義でした。
お店を開くって自分がやる気がないので何も知らなかったけど、結構色々とやることがあるんですね。
最後に、本件に関する私の感想について、先にツイートしてたのでそれを埋め込んでおきます。
何にせよ、コメントが本当なら常連客に法令違反してることぶちまけてたりとか常連客から僕に相談くるとか、色々ロックだなと思うよ。
— Fumy (@fmiyaaaa) 2017年3月23日