ゴリラへの憧憬2 ~超音波治療とゴリラワナビー~
左手首がまだ痛むのでジムに通うなどということは夢のまた夢であり、ゴリラは私から遠く離れたジャングルで今日もバナナを食べている。
この距離は物理的にも精神的にも縮まることはなく、私はその果てしない空隙を少しでも縮めるために左手首に超音波を当て続けている。
ぽーん、ぽーん、ぽーん。
間の抜けた音を放つ本体に繋がれた超音波の照射部が、お湯を張ったバケツの中に放り込まれている。
バケツの中に左手を突っ込んでいる私は、照射部の先端を必死に左手首に向けている。
そして、超音波を直接手首に当てると、手首がもの凄く熱く感じるということを学んでいる。
ゴリラでも涙目の熱さでした。
この日、私の左手にマッサージをしてくれた理学療法士は、私と同じく細身の青年であった。
私は、自らの非力、そしてそれを埋めるために初動負荷理論や4スタンス理論を体得したいと話していた。
理学療法士の彼は、やはり初動負荷理論や4スタンス理論に対して熱い気持ちを有し、彼もまた自らの非力を穴埋めするために理論を体得することを意識している、と話していた。
彼もまたゴリラワナビーであるのかもしれない。
超音波は私から痛みを取り除き、ゴリラは私から今の満足を取り上げる。
筋肉のなかった日々で築いてきた今までの人生の諸々は、筋肉があればまた違った彩りを私に与え、今よりももっと充実した日々が私にもあったのかもしれない。
そういった思いがふいに去来し、晴天に面影が消えていく。
いつの日か、無垢な瞳でバナナを頬張ることができるようになるのだろうか。
私がゴリラになりたいのは単にビリヤードの競技パフォーマンスを向上させたいために尽きるので、バナナは別にどうでもいいかなって最近思っている。
今でも食べられるし、美味しいよね。
次回こそは筋トレをしたいと思いつつ、今日も超音波を当てに行きます。
ここ最近暑いから動きたくないなーとか思ってるけどゴリラへの飽くなき情熱は続く。